今日を 丁寧に 生きるしかない
元鬱病マンががんばるブログ
メンタル

【書評】「ADHDの正体-その診断は正しいのか」をまとめたよ。ADHDの原因は◯◯だ!

「ADHDの正体その診断は正しいのか」って本を読みました。

なにぶん、私がADHD当事者なもので、「自分を知り改善する」って意味でもADHD関連の勉強はまだ続けてるんですよね。

そんな中読んだこの本はあまりに衝撃的で、まさにパンドラの箱を開けてしまったって感じでした。

本読んでこんなメンタルガッタカタになったの、「恋愛依存症」って本を読んだとき以来ですわ……

「ADHDの正体」の著者岡田尊司さんは東京大学哲学科を中退し、京都大学医学部に再入学し、少年院や病院に勤務し、現在はご自身の岡田クリニックを開業していらっしゃいます。

この時点でもう、とんでもねえ人物だなって分かりますね……

 ADHD患者の「薬を飲んでも良くならない」という声

ADHD(Attention-Deficit Hyperactivity Disorder)は注意欠陥・多動性障害とも言われるように、不注意、多動を特徴とする発達障害です。

具体的には、忘れ物をする、遅刻をする(時間感覚がない)、じっとしていられない、変な言動で顰蹙を買う、などが症状になります。

その特性ゆえ、当事者は学業や就業において困難さを感じます。

で、ADHDという病名を知った当事者は救いを求め、メンタルクリニックに駆け込むわけですね。

厚労省の精神疾患に関する患者数の推移です。

ADHDは緑色の「その他の精神及び行動の障害」に該当します。

これを読むと、

・平成8年から平成29年にかけて、精神疾患の患者数はほぼ倍増している。

・しかしその内訳は、統合失調症やてんかんなど従来メインであったはずの精神疾患は横ばいである特徴があり、

気分障害(鬱病)やアルツハイマー、その他の精神及び行動の障害が著しく上昇している

・特にその他の精神及び行動の障害の上昇率は4.2倍

ってことが読み取れます。

いかに現代社会でADHD的症状で困っている人が増え、病院に駆け込む人が多いか、ってことですね……

ADHD当事者は、救いを求めて薬の処方をしてもらいます。

歴史的な話をすると、ADHD治療薬と呼ばれるメチルフェニデート(商品名リタリン)は、1960年代からアメリカで処方が開始されましたが、当時は処方可能なのは子供だけでした。

それが1994年から大人へも「鬱病の薬」として処方可能になり、2013年には「12歳時点で症状があれば大人へも処方可能」となり、あげくASD(アスペルガーなど)の症状を呈する患者には処方できなかったのも処方可能となり、

困っている人が増え、大人への診断・処方も簡単になったことで、ADHD治療薬の処方は爆発的に拡がっています

そしてADHD診断を受け、複雑な気持ちを抱きつつ、「これで良くなる」と飲んだADHD治療薬には、見込まれる効果が発揮されません

私も、最初こそ「頭の中のノイズが減った!」と感動したのを覚えています。ただ、怒りっぽくなり、ミスや遅刻は相変わらず起きるし、副作用で体調は崩れ、更にだんだんと効き目は落ちて行きました

それもさもありなんの論文がこちら、2016年オランダにて発表された論文で(R)、ADHDと診断された平均11.4歳の児童347人に対し、6年にわたりADHD治療薬にて薬物療法を行い追跡調査をした結果、ADHD症状の重症度にも、全般的な機能にも、何ら改善は認められませんでした

更に大人では児童に比べて改善効果はより低いようです。

にも関わらず、副作用として食欲低下、睡眠障害をはじめ、動悸や喉の渇き、更に重篤なものでは幻覚、妄想、精神病、心筋梗塞や突然死も報告されています。

実際問題、ADHD治療薬は「覚醒剤」です。リタリン、コンサータはメチルフェニデートで、アンフェタミンに似ています。アンフェタミンは、戦前戦後ヒロポンとして親しまれていましたね。

学業成績も上がるわけでなく、児童期には更に低身長や生殖機能障害のリスクまであります。

残念ながら、薬は効きません。やることなすこと上手くいかず、現実社会に疲れ、せっかく手にした一縷の光明が薬だったというのに、です。

そもそもなにをもってADHDと診断しているの?

では現実社会に疲れたその人は、何をもってADHDであると診断されているのでしょうか。

実はADHDには、明確な診断基準がありません。これは「大笑い!精神医学」でも述べた通り、鬱病や発達障害という診断に、具体的な診断基準やバイオマーカーは存在しないのです。

「不注意で困ってるから来院したんじゃないか」と私も考えていましたが、不注意の原因にも色々あります。不注意というだけでADHDと診断し、抗ADHD薬を出すのは、発熱があるというだけで細菌感染と診断し、抗生物質を処方するようなものです。

そもそも、「人よりちょっと不注意」というだけではADHDの基準にはなりません。知能障害では、知能検査によりIQ70未満であれば該当、という基準がある一方、ADHDにはそういった基準が存在しないのです。

なんなら、スクリーニング検査を行うと、「処理能力の高い人ほどADHDと似た状態を呈する」という傾向があるくらいです。

ここで問題視されるのは、本来のADHDではないのにADHDのような症状に困り来院し、ADHDと診断される、疑似ADHDの存在があるということです。

疑似ADHDの代表例としては、

ASD(アスペルガーや自閉症など)→体を揺らしたり同じことを繰り返す行動をADHDと誤診断される

インターネット・ゲーム依存→前頭葉の機能が低下し、ADHD様の症状を示す

アルコール・薬物・睡眠薬などの影響

心的外傷による解離性障害などの影響→不利な家庭環境により、神経ネットワークの統合性に異常が生じ、ADHDの症状を呈す

などが挙げられます。

つまりADHDとの診断は、自己申告や不確実な検査を基にした医者の恣意的な診断になります。

なかなかに由々しい事態ではあります。しかしそれでも、「自分はADHDである」と困って精神科を頼る人間が多いことには変わりありません。

ADHD患者はどうして増えてるの?

では、増加の一途を辿るADHD患者はどうすればいいのでしょうか。そもそも、なぜADHDは増えているのでしょうか

その要因を、前項の「心的外傷に因る疑似ADHD」、特に「愛着障害」のためであると筆者は指摘します。

従来、ADHDは生まれつきの発達障害で、遺伝の影響が非常に大きいとされてきました。しかしここで疑問が生じます。

「遺伝的なものなら、なぜADHDの人間は増加しているのか」、と。

そしてこの、「ADHDは生まれつきの遺伝病」という定説を覆す論文が何本も現れます。例えば、ニュージーランドの地方都市ダニーデンで行われた、1973年より38年もの間ADHDの診断を追跡調査したコホート研究があります(R)。

コホート研究とは、同じ地域に同じ時期に生まれた子供を追跡調査する研究のことです。本研究では、3歳から38歳までにおいて何度もADHDに関する診断が行わました。

その結果分かったのは以下の通り。

・1037人中、38歳時点でADHDと診断された人数は31人。

・この中で12歳時点でADHDと診断された人数は3人

・逆に、12歳時点でADHDと診断されていた61人は、38歳時点では9割が改善。

・成人のADHDは持続していない。このことから、「遺伝的な発達障害」と呼べるか疑問が生じる

この研究と類似の結論を示すものは数多くあります。

そもそも、ADHDが遺伝的な発達障害だとされていたのは、一卵性双生児間や親子間でのADHD罹患率の相関を取った研究によってでした。

しかし、これらの研究には疑問の余地が残ります。

一卵性双生児間では、環境が共有されやすい(同じ家庭の元、同じように育つことが多い)ため、遺伝要因として算出された数値に疑問が残り、環境の影響を無視できないこと。

さらに近年、遺伝子は環境により後天的に変化する「エピジェネティクス」という現象が明らかになりました。「環境が変われば遺伝子も変わる」ということですね。

そして親子間での研究ではより衝撃的な例があります。

卵子提供を受け出産したケース、出産直後養子に出したケースなどを見て、子供は実母と養母のどちらのADHD症状を受け継ぎやすいか、という研究で、なんと実母のADHD症状とは全く相関がなく、養母のADHD症状と有意な相関を認める、というものです。

つまり、遺伝要因より養育要因の方がADHD発症に影響が大きい、と言えます。

遺伝要因もあるといえばあります。例えば、ドーパミンD4受容体(DRD4)などは、多くの研究でDRD4変異型遺伝子とADHDの相関があると示されています。

しかしそれでも、遺伝子の影響はごく僅か。実態は、実母がADHD症状を持つと、子供は快活になる。その際、養母もADHD症状を持つと、自分と似た性格の子供を敵視し、ADHD発症に繋がる、という例が多かったとのこと。実に恐ろしいですね。

また更に、「ADHDの母親は衝動的な行動をとってしまう特性があるため、不適切な育児に繋がりやすく、環境の悪化を招く。これにより発症した疑似ADHDでも、遺伝性と見られてしまうことが多い」との見解もあります。

その他、疑似ADHDを招く悪環境の中には、食品添加物や化学物質の影響もあります。ワクチンが自閉症を招く、という話も聞いたことがある方もいるでしょう。

しかしそれでも、ここに来て、筆者の専門分野に話が進みます。

近年激増したADHD患者は疑似ADHDがほとんどであり、その根幹には愛着障害が存在する」、と。

愛着障害とは?

愛着障害。

冒頭に紹介した「恋愛依存症」という本にもこの概念は述べられていました。

「愛着スタイルには安定型と不安定型があり、不安定型には

  1. 不安型
  2. 回避型
  3. 混乱型(不安型、回避型のミックス)

がある。

これら不安定な愛着スタイルを持つ人間は、恋愛に失敗したり、相手に依存したりしがちである」

そして「恋愛依存症」に書かれている内容、私の自己紹介が勝手に書かれているのかと思うほど見覚えがある例、しかも悲惨な例が多すぎて、あまりに衝撃的でした。

私もとてつもない毒親、ひどい環境の元育ったもので、愛着スタイルが安定していないのでしょう。

「その不安定な愛着スタイルがADHDの根っこである」、と本書「ADHDの正体」で述べていて、「開けてはいけないパンドラの箱だったのでは」とすら感じました。

愛着障害を見分けるポイントとして、以下が紹介されています。

・教育上の問題や過酷な体験が存在する(虐待、親や家族の重病や死、家庭の不和、親の離婚や別居、長期の母親以外の養育、きょうだいに母親の関心を奪われている、など)

・愛着障害に特徴的な症状がある(過剰な気遣い、本心が言えない、習癖化した攻撃性、困らせる行動、自己破壊行動、自尊心の低さ、など)

・愛着障害関連障害が複数存在すること(鬱、ADHD、対人不安感、頭痛や腰痛など慢性痛、依存症、過食など)

・ADHDとともにASDもあるが、どちらも軽度

・神経機能障害が軽度なのに、社会適応障害が深刻(学力などが高いのに学校や会社でうまくいかない、など)

……当てはまり過ぎて、またもや「勝手に私の自己紹介書くのやめてくれ」となりました。

確かに、生きづらさの根本に愛着障害が眠っていること、少なくとも私の場合は、間違いなさそうです。

じゃあこれ、どうすればいいの?っていうのが気になります。私も修行中の身でありますので。

ずばり、「薬物療法よりも心理社会的アプローチによる方法が良い」とのこと。

具体的には、認知行動療法やニューロフィードバック、ペアレントトレーニング、「愛着に焦点化したアプローチ」が有効であると言われています。

・認知行動療法

時間管理や整理の技術、計画的遂行に重点をおいた療法。ADHDの症状のみならず、不安感や気分の面でも向上が見られるとのこと。(手帳にこまめにメモつけるなどがコレにあたりますね)

・ニューロフィードバック

脳波をモニターしながら、集中力の高まった脳の状態やリラックスした状態を自分で維持できるように訓練するもの。ADHDの症状だけでなく、バスケット選手の能力まで向上させたとか。(イメトレや瞑想もコレに近いと思います。実際症状を改善できるかなと)

・ペアレントトレーニング

親を対象にする。子供の状態について理解を深めるための心理教育、子への接し方を記録する自己モニタリング、ロールプレイなどの実践的トレーニングを通じ、子へのより良い接し方を学ぶ。

・愛着へのアプローチ

症状の改善ではなく、子供と親の関係を改善するのを目標にする取り組み。

などなど。

これらにより内からも外からも向上し、愛着を育み、愛着障害を克服しよう、というものですね。

愛着障害の克服には、「振り返る力(内省機能)」が重要と言いますが、多くの愛着障害該当者はそれが欠如しているといいます。そのために、トレーニングや、「振り返る力」を持っている人との関わりを通じて、「振り返る力」を高めて行く必要がある、とのことです。

 

本記事、本ブログで最長になりましたが、それだけ衝撃的な内容であったため長めになりました……

私の親の毒親っぷりや、ADHDの改善した過程・これからの努力や、岡田さんの他の本のまとめについてもまた今後書いていこうかと思います。

一層頑張らないとなと思います。よろしくお願いします。